レビュー
メタリカの4枚目のスタジオアルバム。
本作を語る上で外せないのが、特に2枚目「RIDE THE LIGHTNING」や3枚目「MASTER OF PUPPETS」でその才能をさっきした天才、クリフ・バートンの死であろう。
1986年、「MASTER OF PUPPETS」のリリースに伴うヨーロッパツアーでのバス移動の最中、カークとクリフはその日寝る場所を選ぶ順番をトランプで決めようとしていた。結果クリフが勝ち、自分で選んだ寝床についた。それからしばらくして早朝、突然バスがスリップし横転。そのはずみでクリフはバスから投げ飛ばされ、頭か地面に落ちて亡くなった。この事故は路面の凍結が原因だとも、バスの運転手が飲酒運転していたからとも言われているが、結局はっきりしていない。
その後メタリカは後任のベーシストとしてジェイソン・ミューステッドを迎える。ただしクリフを失って深い悲しみの中にいる他メンバーに馴染むのは簡単なことではなかった。
本作の大きな特徴として、「ベースの音がほとんど聞こえない」というものがある。これはメンバーのジェイソンに対する嫌がらせによるものだとも言われている(ジェームズは否定しているが)。
さて話をアルバム自体に話を移す。先のように非常にベースの音がカットされている印象があるが、それ以外にも全体的に音がソリッドである。
ギターの音はまさにドンシャリといったサウンドであり、なんども書いているベースの音が聞きづらい状況でありながら十分に低音域は出ているし、かつ音の輪郭が非常にシャープである。ドラムの音、とりわけスネアの音にリバーブはほとんどかかっておらず、やや棘のある表現であることを覚悟でかけば非常に軽い音である。それが逆にギターのドンシャリサウンドを引き立てているのだと思う。
曲調は全体的に大作志向であり、曲の構成や進行が複雑である。曲の長さも6分以上の楽曲が大半を占める。
クリフを失った悲しみと怒り、そしてそれでも前に進むというメンバーの決意が表現されているかのようなアルバム。
楽曲解説
1曲目「BLACKENED」は過去作でいうと「FIGHT FIRE WITH FIRE」や「BATTERY」に該当する、アルバムのオープニングにして勢いのあるナンバーではあるのだが、本作特有のソリッドな音作りも影響し、そこまで早くは聞こえない。裏拍を強調したリフが特徴的。
2曲目「…AND JUSTICE FOR ALL」。10分近くある大作。全体的にミドルテンポで進行していき、ものすごく大きく転調したり、テンポチェンジを繰り返すということはない。ただし中盤から終盤にかけての展開はやはりメタリカの真髄である「静と動の対比」が見て取れる。
3曲目「EYE OF THE BEHOLDER」。2曲目と同じくミドルテンポの楽曲。2曲目ははまだメロディアスであったが、こちらはどちらかというとグルーブに主眼が置かれている印象。
4曲目「ONE」。前半は物悲しく、静かなでありながら力強さも感じるバラード。徐々に盛り上がっていき、後半は非常に冷徹かつ勢いのあるメタルパートとなっている。過去作にも「WELCOME HOME」のように「前半は物静かで、後半盛り上がりを見せる」という楽曲はあったが、この曲はそれをより大胆にしている。メタル 史上に残る名曲。
5曲目「THE SHORTEST STRAW」は1曲目のような勢いのある曲。曲の合間のスリリングなギターのフレーズが印象的。あとこの曲は比較的ベースが聞こえるような…
6曲目「HARVESTER OF SORROW」。本作の中で非常にヘヴィでダークな雰囲気の曲。
7曲目「THE FRAYED ENDS OF SANITY」。「KILL ‘EM ALL」にあるような、跳ねるようなリズムのリフと、ギターソロのバックで流れるザクザクとしたバッキングが非常に格好いい。あまり話題に上がることはないけど、個人的には本アルバムでもかなり気に入っている曲。終盤手前の展開もなかなかドラマティック。
8曲目「TO LIVE IS TO DIE」。本作で唯一クリフ・バートンの名前がクレジットされている、まさに遺産とも言える曲。内容は非常に叙情性あふれるメタル バラード。中盤の盛り上がりが非常にかっこいい。
9曲目「DYERS EVE」。本作最速かつ、この後20年近く聴けなくなることとなったスラッシュメタル・ナンバー。非常に疾走感があり、曲の最初から最後までを一気に駆け抜ける。
アルバム情報
リリース:1988/8/25
楽曲情報
1. BLACKENED
2. …AND JUSTICE FOR ALL
3. EYE OF THE BEHOLDER
4. ONE
5. THE SHORTEST STRAW
6. HARVESTER OF SORROW
7. THE FRAYED ENDS OF SANITY
8. TO LIVE IS TO DIE
9. DYERS EVE
メンバー
Jmaes Hetfield – Vo. Gt.
Kirk Hammett – Gt.
Jason Newsted – Ba.
Lars Ulrich – Dr.
関連動画
地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム(主にFPS)。
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