レビュー
テキサス発のメタルバンド、パンテラの5枚目。ただその前の4枚のアルバム、「METAL MAGIC」「PROJECTS IN THE JUNGLE」「I AM THE NIGHT」「POWER METAL」は現在入手困難であり、公式HPのディスコグラフィにも乗っていない。さらにその4枚と本アルバム以降では音楽性が異なっているため、実質第2のデビュー作といってもいいのかもしれない。
本作は「グルーブメタル」というジャンルのパイオニア的アルバムでもある。スラッシュメタルの影響下にあるジャンルではあるし、場合によっては同一視されることもあるが、スラッシュメタルに比べると、それこそ「グルーブ感」が強調されており、言い換えると「ノレる」楽曲が多い。テンポ自体も早い楽曲はあるものの、例えばスレイヤーのように16分をひたすら刻むような感じではない。
また本作、というより本作からのこのバンドの特徴として過激なサウンドも挙げられるだろう。ギターのサウンドは歪みまくっており、さらにハイが強調されている。ここまでハイが強調されていることで音のエッジが立っており、おそらくグルーブ感を生み出すタイトなバッキングを可能にしているのだと思う。
余談であるが、本作のリリース前にギターのダイムに「メガデス」への加入の話があった。ただダイムは兄と一緒に加入することを条件として外さなかったため、代わりにかの有名なマーティー。フリードマンがメガデスに加入することになったとのこと。
楽曲解説
1.「COWBOYS FROM HELL」。非常に軽快でノリのいいリフがミドルテンポで続く名曲。
2.「PRIMAL CONCRETE SLEDGE」。曲のメインとなるリフは非常にうねりを強調したフレーズだが、中盤あたりに趣の異なる、ブレークダウンに近いようなギターソロ(?)がある。2分少々しかない曲だが、次の瞬間に印象が変わる、ちょっとプログレッシブ感ある曲。
3.「PYSCHO HOLIDAY」。中盤のギターソロ必聴だが、バッキングのギターがないので、何気にリズム隊のグルーブ感を堪能するに一番適している曲。
4.「HERESY」。比較的スラッシーで、ややテンポも早め。ただこういった曲でもそこまで無茶にテンポを上げずに刻むようにリフを奏でるのが、グルーブメタルと言われる所以だろうか。後半からリフの種類が変わり、何気なく聴いていると別の曲に移行したように感じる。
5.「CEMETERY GATES」。珍しくアコースティクギターを使用した、静かなフレーズが印象的。ただザクザクとした従来通りのリフも使用されており、これがグルーブメタル・バラード…なのだろうか?聴く人によって印象が変わりそうな曲。
6.「DOMINATION」。本作で1、2位を争うほど激しく、スラッシュメタルの影響が色濃く出ている曲。ギターソロが所々少しだけエスニックであるように感じる。
7.「SHATTERED」。先ほどの曲と同じくかなり激しいリフだが、こちらはスラッシーというよりは、ややハードロックや正統派メタルちっくな感じ。ギターソロもハードロックっぽい。
8.「CLASH WITH REALITY」。リフが非常にうねっており、これぞグルーブメタルといった内容。
9.「MEDICINE MAN」。今度はリフ…というより非常にベースがうなる。この曲だけちょっとベースの音の輪郭がはっきりしているのは気のせい?曲自体はちょっとダークな感じ。
10.「MESSAGE IN BLOOD」。先ほどの曲より際立ってダーク…というか、不気味な雰囲気の曲。ギターソロももはやブラックメタルではないかと言いたくなるようなフレーズ。非常におどろおどろしい。
11.「THE SLEEP」。曲のタイトル通り、非常にゆったりとした曲。
12.「THE ART OF SHREDDING」。最後を飾る曲だけあって、非常にスラッシーなリフが繰り広げられている。
アルバム情報
リリース:1990/7/3
メンバー:
Phil Anselmo – Vo.
Diamond Darrell – Gt.
REX- Brown – Ba. Acoustic guitar. Piano
Vinnie Paul – Dr.
地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム(主にFPS)。
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