【メタル入門③】ヘヴィメタルのサブジャンルについて①

メタルを語るにおいて欠かせないのが、そのサブジャンルの多さでしょう。

メタルという音楽は誕生から半世紀ほど経っているわけですから、その歴史の中で様々なサブジャンルが生まれました。

そのサブジャンルごとのファンがいますので、一口に「メタラー」と言っても全然お互いに話が通じないということが割とあります。

なるべく多く解説したいところですが、日本語版Wikipediaで「ヘヴィメタルのサブジャンル」のカテゴリーにあるのがなんと62ページもあり、もちろんWikipediaに乗っていないものもあります。

有名どころだけ解説しようと思ったら思いの外量が多くなってしまったので、ひとまず第一弾としてお送りします!


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正統派メタル

あらゆるヘヴィメタルのサブジャンルの中で、最初にできたジャンルです。
(というか、このジャンルが狭義の「ヘヴィメタル」です)

クラシック・メタル、トラディショナル・メタルとも言うようですが、正直あまり聞かないですね。

前身となるハードロックを順当により重く、より凶暴にしたような音楽性であり、初期の正統派メタルはハードロックとの境目があまりはっきりとしていません。

よって、一緒に「HR/HM」とひとまとめにした呼称も用いられます。


1960年代末に誕生したこのジャンルはパンク・ロックの台頭、そして後述するより過激なメタルの登場により新規のバンドがほとんど見られなくなりましたが、2000年代後半からこの「古き良き」音楽への原点回帰を目指す若手バンドが生まれるようになり、今日でも「ヘヴィメタル」というジャンル全体の重要なポディションにいます。

代表的なバンド:Black Sabbath, Judas Priest, Scorpions,  など



NWOBHM

1970年代、当時盛り上がりを見せた「パンク・ロック」の影響でメタルを含めたそれ以前の音楽は「時代遅れのもの」として扱われていました。

しかしそのパンク・ロックに反抗し、「伝統的な音楽」を演奏するバンドが1980年前後にイギリスで次々と生まれました。

この伝統的なヘヴィメタルが復活した一代ムーヴメントを”NWOBHM (New Wave Of British Heavy Metal)”と言います。

この時期に誕生し、最も有名なバンドがIron Maidenです。

代表的なバンド:Iron maiden, Angel Witch, Saxon, Diamond Head など



NWOTHM

そんなNWOBHにて再度の盛り上がりを見せた正統派メタルですが、先述した通りより過激なサブジャンルの台頭、そしてグランジやオルタナティブ・ロックの中高によるメタルというジャンル自体の衰退により、もはや新規で伝統的なメタルを演奏するバンドはほとんど見られなくなり、正統派メタルといえばJudas PriestやIron Maidenというベテランバンドが演奏する音楽であるとされました。
(日本人的な感覚でいうなら、懐メロって感じでしょうか?)

しかし2000年代末から、かつてのNWOBHMに準ずる若手バンドが現れ始めました。

しかもNWOBHMが名前の通り、あくまでもイギリスに限ったムーブメントだったのに対し、今度は全世界にわたって同一の流れが生まれました。

そうした流れを、”NWOTHM (New Wave Of Traditional Heavy Metal)”と名づけられています。

代表的なバンド:White Wizzard, Wolf, Striker など



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グラムメタル

グラムメタルはアメリカで生まれたジャンルで、「ヘア・メタル」とか「LAメタル」などと呼ばれることもあります。


なぜそのような呼ばれ方をするかといえば、ロングヘアーをヘアスプレーで膨らませた特徴的な見た目でしょう。
さらにメイクをしたりセクシーさを強調したファッションだったりと、中性的でセクシャルなイメージの外見をしているバンドが多いです。

音楽的特徴としては、ポップス的な要素も取り入れた煌びやかで、ノリのいい感じが多いです。

これまでどちらかというとアングラな雰囲気だったメタルですが、このグラム・メタルはメタルの大衆化に成功しました。

特に代表格であるBon Jovi は、日本でもメタルどころか洋楽を普段聞かないような人ですら一度は聞いたことがあるしょう。

このようにヘヴィメタルとしては非常に多くの人に親しまれているジャンルですが、あまりにもポップで、かつ大衆的である姿はかつてのアングラな雰囲気を好む従来のメタル・ヘッズには不快感を与えていました。

そこで誕生したのが、次に紹介するスラッシュ・メタルです。

代表的なバンド:Bon Jovi, Dokken, L.A. Guns, Mötley Crüe, など



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スラッシュメタル

先述したグラム・メタルに反抗する形で誕生したのがスラッシュメタルです。

スラッシュ(Thrash)は”鞭打つ”という意味ですが、その名の通り早く攻撃的で刻むようなリフを特徴としています。

スラッシュメタルはNWOBHMにハードコア・パンクの要素を取り入れた音楽性と言われることがあります。
例えばスラッシュメタルの代表格であるMetallicaSlayerの1stアルバムを聴いてみると、かなり色濃くNWOBHMの影響が残っているのがわかります。

しかしNWOBHMと違い、叙情性は残しつつも伝統美を排除し攻撃性を前面に押し出した音楽性は非常にストレートで、この辺はハードコア・パンクの影響があるといえます。

この時代はとにかく早くリフを刻むことが半ば正義と言われており、先述したMetallicaは「Fight Fire With Fire」、Slayerは「Angel of Death」といった非常に早く、もはや演奏技術より筋肉が必要なんじゃないかという楽曲をリリースしています。

スタッシュメタルは誕生した80年代から爆発的な人気を獲得して、大衆的とされていたグラム・メタルを差し置いて一気にメタル界のメインストリームとなります。
(多数派を否定して新たな音楽性を作ったら、そっちが多数派になることはロック史あるあるですね)

しかし一時は不動のものとしたその人気も90年代には陰りが見え始め、先述したオルタナティブ・ロックの台頭やグルーブメタル、そしてニューメタルの登場により多くのスラッシュメタル・バンドがその音楽性を変更したり、解散や活動停止を余儀なくされました。

しかし2000年代末から再びスラッシュメタルの音楽性が評価し始められ、多くの若手バンドが生まれると同時に、音楽性を変更していたベテランバンドもスラッシュメタルへの回帰をするようになりました。

今でもメタルフェスには必ずスラッシュメタル・バンドは参加しており、未だメタル界のメインストリームであり続けています。

特に下記の代表的なバンドとして挙げている4つのバンドは「Big4」と呼ばれ、最初期から今までスラッシュメタル界、ひいてはメタル界全体を牽引する非常に重要なバンドです。

代表的なバンド:Metallica, Slayer, Megadeth, Anthlax, など

ベイエリア・スラッシュメタル

スラッシュメタルの内、その最初期にカルフォルニアのサンフランシスコ・ベイエリアにて結成されたバンドたちを「ベイエリア・スラッシュメタル」と区別されています。

中音域に特徴のある、ザクザクとしたサウンドは「ベイエリア・クランチ」と呼ばれ、ベイエリア・スラッシュメタルの音楽的特徴となっています。

このサウンドを確立したのは現在Metallicaのギタリスト、カーク・ハメットであり(当時はExodusに在籍)、Metallica自体もこのベイエリアを拠点としていましたが、Metallica自体はベイエリア・クランチを使っておらず、また音楽的特徴もほかベイエリアのバンドとは異なるため、ベイエリア・スラッシュメタルで語られることはほとんどありません。

代表的なバンド:Exodus, Testament, Death Angel など

ジャーマン・スラッシュメタル

スラッシュメタルはアメリカで誕生しましたが、その人気は凄まじく、すぐに海外へと進出しました。

その土地土地で独自のスラッシュメタルが誕生していきますが、その中でも有名なのがジャーマン・スラッシュメタルです。

かつて名だたる音楽家を数多く輩出し、ロックの時代になっても美しいメロディを取り入れ続けたドイツ。
そこにたどり着いたスラッシュメタルは意外や意外、アメリカ以上に過激で攻撃的な音楽へと変貌します。

特にサウンドはベイエリア・スラッシュメタルとは違い重くゴリゴリとした、まさに重戦車が突き進むかのような轟音と取れるようなサウンドであることが多いです。

ただし、そこは先述したように歴史ある音楽の土地。
そういった攻撃性の中にもさらりとドイツらしい計算され尽くした美しいメロディを取り入れており、アメリカのバンドとは違った雰囲気を呈しています。

代表的なバンド:Kreator. Sodom, Destruction



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デスメタル

上記のスタッシュメタルから派生したジャンルがこのデスメタルです。

たぶん、メタルを聞いたことがない日本人の多くは「メタル=デスメタル」と思っているんじゃないかな?と言葉だけは有名ですが、実はメタル全体でいうならそこまでメインストリームというわけでもないです(むしろアングラっぽい)。

音楽性はスラッシュメタルをより重く、より過激にしたような音楽性です。
スラッシュメタルとの境目は曖昧ですが(どっちつかずの「デスラッシュ」ってジャンルもありますし)、スラッシュメタルよりもギターの音が「ジャリジャリ」しているというか、高音が耳にまとわりつくような音が多ように思います。
(大音量で聴いていたら絶対耳がいかれるような感じ)

またもう一つの特徴がいわゆる「デスボイス」でしょう。

今では他のジャンルで使われることは少なくないデスボイスですが、デスメタルもジャンル名に違わず、この歌い方をするバンドがほとんどです。
(ちなみにデスボイスは日本独自の呼称で、声の出し方でグロウル/ガラテルなどに別れます)

前述の通りそこまで大きな勢力ではないですが、アンダーグランドではカルト的な人気がありますし、また遠く海を越えてスカンディナビア半島へと渡ったのちは後述するメロディックデスメタルへと変化していきます。

代表的なバンド:Death, Obituary, Suicide Silence など


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メロディックデスメタル

メロディックデスメタルは、攻撃性に特化したデスメタルと、美しい旋律という相反する要素を掛け合わせたジャンルです。


その誕生は北欧、スウェーデンやフィンランドといいたスカンディナビアの国々です。
そこで当初は伝統的なデスメタルが演奏されていましたが、At the Gates, In Flames といったバンドがNWOBHMの様式美やメロディを取り入れ行き、今日のメロディックデスメタルが誕生しました。

また、Carcassのようにより過激なグラインドコアというジャンルから成立していったケースもあります。

特に正統派ヘヴィメタルとは「デスボイスを使っていること」「ダウンチューニングを用いることが多いこと」を除けば音楽的は大差ないこともあり、ある意味メタルというジャンルの正当進化ともいえます。

デスメタルの人気が限定的であるのに対し、親しみやすいメロディを有しているからか、メタル界ではかなりの人気ジャンルとなっています。

特にその叙情的なメロディはもはや歌謡曲的な領域に行くこともあるので、我々日本人好みの音楽ジャンルでもあります。

場合によってはフェスのヘッドライナーを務めるバンドもいたりと、今日でもメタル界の一代ジャンルとして君臨しています。

代表的なバンド:Arch Enemy, At the Gates, In Flames, Carcass, Children of Bodom など



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ブラックメタル

同じく北欧で生まれたジャンルがブラックメタルです。

デスメタル、メロディックデスメタルとよく混同されがちですが、デスメタルと違って、スピードはあってもメロディやコード進行自体はゆったりとしていたり、さほどダウンチューニングを用いないという特徴があります。

見方を変えれば、メロディックデスメタル以上に正統派メタルに従順であるともいえます。

また最大の違いと言っていいのが、デスメタルのモチーフは「死」「暴力」「戦争」と言ったものであるのに対し、ブラックメタルは「反キリスト」「反教会」「サタニズム」といった思想を持っていることがほとんどです。

その思想は時に現実の犯罪に結びついたこともあり、「どれだけヤバイ犯罪をしたか?」がバンドのステータスになっていた時期すらありました。
(流石に今は落ち着いていますのでご安心を)

さらにファッション的にはいわゆるコープスペイントと呼ばれる、白塗りのメイクをすることが多いです。
(これよく混同されがちですが、デスメタルバンドでコープスペイントをするバンドはまぁいません)

あまりセールス的に大成功といったジャンルではないですが、それでも世界各国に演奏するバンドがいるようにカルト的な人気を持っています。

代表的なバンド:Emperor, Mayhem, Dark Funeral など



ブラッケンド・デスメタル

よく似たジャンルとして混同されやすいデスメタルブラックメタルですが、それを融合させた(させてしまった?)ジャンルがブラッケンド・デスメタルです。

デスメタルのサブジャンルとも、ブラックメタルのサブジャンルとも取れますが、同じようにデスメタルをベースにブラックメタルの要素を取り入れたバンド、もしくは逆のバンド双方が存在します。

あまり日本では認知なく、どちらかというとただ単にブラックメタルとして分類されることが多いように思いますが、海外ではWikipediaに独立したページを持っているように、一定のファンがいるようです。


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まとめ

他にもまだまだ有名なサブジャンルはありますが、とりあえず本日のところはここまで。

ここで紹介しきれなかったものはまた後日!

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