【レビュー】WE ARE NOT YOUR KIND / SLIPKNOT

レビュー
楽曲解説
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レビュー

アイオワが生んだ怪物、スリップノットの6枚目のスタジオアルバム。

前作から5年の歳月を経てリリースされた今作であるが、全体を聞いた印象は「暗い」だった。確かに5曲目「NERO FORTE」のような旧来のスリップノット節を感じる曲はある。ただ通して聴くと静かで、怪しげで、そして狂気的である。どこかカルト宗教の集まりのような雰囲気を感じる。

私はスリップノットの魅力は「音の壁」だと思っていた。多数のパーカッションが在籍し、非常に手数の多いドラム、唸るギターやベースといったものが当時の若者を虜にし、そして彼らの名声を築いてきた。それは決して本作で減衰したということはない。相変わらずの重低音を聞かせてくる。

ただ本作はそれと同時に、結構タイトな音作りをしているように感じる。ジェントっぽいといえば、近いかもしれない。それに加え曲によっては、物悲しかったり、静かであったり、ひらすら不気味だったりする。「IOWA」のエモーショナルさを期待していると、ややがっかりするかもしれない。だが本作の魅力は他ならぬその「不気味さ」にあるのだ。

そう、本作は非常に「不気味」である。

楽曲解説

1曲目「INSERT COIN」。電子音が中心となるインスト曲。最初から不気味さ満点。

2曲目「UNSAINTED」。さっきの曲の雰囲気を引き継ぎつつ、しばらくしてからスリップノット節炸裂。ただサビはクリーンでエモーショナル。緩急がはっきりしているプログレッシブ的でもある。

3曲目「BIRTH OF THE CRUEL」。2曲目と違って、かなりヘヴィさを強調した楽曲。

4曲目「DEATH BECAUSE OF DEATH」。ひたすら同じ文言を繰り返し、バックの音楽も控えめでかなり不気味な曲。

5曲目「NERO FORTE」。改めて重低音をマシンガンのように繰り出す、アグレッシブな楽曲。曲中盤ドラムとギターが完全にシンクロしているところは非常にタイトで、サウンドの厚さと反して寸分の狂いもなく重なっている。

6曲目「CRITICAL DARLING」。これまた攻撃性溢れる楽曲。雰囲気としては2曲目に近い。

７曲目「A LIAR’S FUNERAL」。アコースティックギターのバッキングで、淡々としたコリィの語るような歌唱が引き立ち、ドゥームな雰囲気の楽曲。

8曲目「RED FLAG」。一転してアグレッシブかつヘビィな楽曲。終始攻撃的なリフ、ボーカルが繰り広げられるので、本アルバムでいちばん攻撃的かもしれない。

9曲目「WHAT’S NEXT」と10曲目「SPIDERS」。9曲目は10曲目の前奏的な立ち位置（というより分ける意味はあるのだろうか？）。ほとんどベースとドラムがメインだが、時折インダストリアルなサウンドが見受けられる。終始ダークな雰囲気で、終わったと思ったら次の曲への前奏が始まる。

11曲目「ORPHAN」。出だしは非常にキレのある、スラッシュメタルチックなサウンドであったが、始まってみればいつものスリップノットサウンド。

12曲目「MY PAIN」。再び物静か・・・というか、どことなくカルトっぽい。歌詞をみると、メンヘラっぽい。サウンドはインダストリアル。不気味さ100点満点。

13曲目「NOT LONG FOR THIS WORLD」。前の曲の不気味さを引き継いでいる出だし。その後ややヘヴィであり、ややメロディアスなギターが少しだけ入る。言葉で言い表せない狂気的な曲。

14曲目「SOLWAY FIRTH」。本作の集大成。それまで続いていた不気味な雰囲気は持ちつつも、曲のメインパートは非常にアグレッシブ。所々でギターがメロディアスだったり、インダストリアルなサウンドが入っていたり。これまでの曲を全てごちゃまぜにした感じで、程よく狂っている。

15曲目「ALL OUT LIFE」。先行して発表されているにも関わらず、アルバムに収録されているのはなぜか日本版だけである。しかもこのアルバムのタイトルが歌詞の一部に入っているのに・・・。曲自体はスリップノットらしい、ヘビィなギターがうねるようなフレーズを奏でている。曲中盤でバックはやや控えめになって、コリィの主張するようなボーカルが響く。

アルバム情報

リリース：2019/8/9

メンバー：
SHAWN CRAHAN – Percussion
CRAIG JONES – Key.
MICK THOMSON – Gt.
COREY TAYLOR – Vo.
SID WILSON – turntables,Key.
JIM ROOT　- Gt.
ALESSANDRO VENTURELLA – Ba.
JAY WINBERG – Dr.