DISTANCE OVER TIME / DREAM THEATER

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レビュー

プログレッシブメタルの代名詞、ドリームシアターの14枚目のアルバム。

前回の「The Astonishing」が2枚組、2時間超えかつ一貫したストーリーをもつコンセプトアルバムということで、ドリームシアターらしいといえばらしいのだが、正直聴く人を選ぶアルバムではあったと思う。アルバム自体は決して冗長な内容というわけでなく、最初から最後まで気の抜けない、それこそ1本の映画をみているように感じる。しかし、それはある程度「訓練された」人だとそう感じるだけで、最初にとりあえずドリムシに興味持ったから聴いてみたいという人に聞かせるのはハードルが高い。

それに対して本作はまず非常にコンパクトにまとまっている。なんと全曲合わせて1時間ないのだ。最近のアルバムでは比較的短くまとめられていた13枚目「Dream Theater」ですら1時間を超えている。そんな中でこのサイズのアルバムは、異例といえる。ただし、名盤と名高い2枚目「Images and Words」も実は1時間以内のアルバムであるので、もともと彼らはこのサイズのアルバムを作ることはできたのだ。ライナーノーツでジョン・ペトルーシは今回のアルバムについて「ルーツに戻って、もっと有機的なアルバムを作る時がやってきた」と語っている。つまりは原点回帰的であって、かつメンバーのやりたいことを凝縮した1枚ということだろう。この「原点回帰」はCDの帯にもそのように書かれている。ただ単純に先に挙げた「Images and Words」の頃のようなアルバムをまた作るということではなく、あくまで曲やアルバムに対するスタンスということでは無いだろうか。

前作と違い一貫したテーマに沿っているわけではないので、当然個々の楽曲に一貫性があるわけではない。だがそれは、個々の楽曲がそれ単体で完結することができているということである。それでいて、それぞれの曲はどこか同じ空気が漂っている。幻想的で、それでいて退廃的な。

1曲目の「Untethered Angel」にてしずかなアルペジオで始まったかと思いきやいきなり重低音かつテクニカルなリフを聴かせて、その流れは2曲目「Paralyzed」にてつながる。3曲目「Fall into The Light」は少し明るい感じで始まったかと思うと、曲の中盤で物静かで叙情的なギターソロが挿入される。そして終盤にかけてまた盛り上がりを見せていくので、個人的にはこの曲がこのアルバムで一番好きだ。4曲目「Bastool Warior」も1曲の中で動きはあるのだが、全体的にはやや静かで、それでいて悲しくも優しい印象を感じる。しかしその後の5曲目「Room 137」は逆にアンダーグランドで暗い印象を受けるので、ここの対比は実に見事。そうかと思えば6曲目「S2N」でまた軽快に駆け抜ける。そして7曲目「At Wit’s End」はこの曲で一番長い曲(それでも10分は超えていない)であるだけに、1曲で山あり谷ありで様々なシーンが盛り込まれており、これぞドリームシアターという逸品である。そしてその曲が静かに終わった後、8曲目「Out of Reach」が静かにつないで、最後「Pale Blue Dot」が力強くこのアルバム全体をまとめ上げる。

ドリームシアターという、そしてプログレッシブメタルという決して聴きやすい音楽では無いのだが、このアルバムは入門用としてぜひ進めたい。

 

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アルバム情報

収録曲

  1. Untethered Angel
  2. Paralyzed
  3. Fall into The Light
  4. Bastool Warior
  5. Room 137
  6. S2N
  7. At Wit’s End
  8. Out of Reach
  9. Pale Blue Dot

メンバー
James Labrie – Vo.
John Petrucci – Gt.
John Myung – Ba.
Jordan Rudess – Key.
Mike Mangini – Dr.

 

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