レビュー
アーチエネミーの4枚目のアルバム。彼らにとって大きなターニングポイントとなったアルバムであるし、今日まで続く彼らの人気の直接の起点となった作品。
本作で大きく変わったことが2つある。
1つはボーカルの交代である。前ボーカルのヨハン・リーヴァが脱退…というか、「フロントマンとしての実力不足」を理由に解雇された。その後任として加入されたのが、アンジェラ・ゴソウという「女性の」ボーカルである。ボーカルの交代劇はメタル界隈ではとりわけ珍しい話ではないが、ボーカルの性別が変わったバンドは古今東西探してもあまり例がないのではないか?ただそのボーカルスタイルはまさに「野獣」。力強く、非常に通るタイプのデスボイスで歌い上げる。現在はさらにボーカルが交代しているが、「女性ボーカル」であることは共通している。
2つ目は曲のキーが変わっている。これまでギター、ベースは2音半下げ、つまり「Bキー」であった。しかしこのアルバムから半音上がって「Cキー」となっている。これにより、特にギターソロの哀愁さが際立っているように思う。またアンジェラのボーカルスタイルからして、半音上げた方がしっくりきたのだろうし、事実その通りである。
ボーカルの変更、およびキーの変更により、良くも悪くもアンダーグランドな雰囲気は消え、非常にメジャー感が出てきている。それでも作品自体はこれまでと変わらず、非常に良質なメロディック・デスメタルであり、個人的にはアーチエネミーの中でトップ3に入るほど気に入っている作品である。
あとこれは余談だが、日本では他の地域に比べてなんと1年近く先行してリリースされている。それほど日本のファンに早くこの変化を伝えたかったのだろうか?日本のファンの一人として感無量である。
楽曲解説
1.「ENEMY WITHIN」
ピアノのイントロで始まるところから、すでに本作が過去作と大きく違うところが想像できる。そしていざ始まると、残酷なサウンドで有りながらどこか叙情的でもある。ギターソロも扇情的。
2.「BURNING ANGEL」
曲の出だしからいきなりクライマックス。これまた力強くもメロディアスなフレーズが印象的。
3.「HEART OF DARKNESS」
どちらかというとヘヴィネスが強いが、それでも曲の所々で爽やかな印象のフレーズもあるし、何よりギターソロは叙情性抜群であり、メインとなるリフとの対比が素晴らしい。
4.「REVENOUS」
ライブの定番曲。ノレるし、歌えるフレーズ満載。メロデスの体裁を保ちながら、これだけ疾走感溢れる曲もまた珍しい。そしてギターソロのメロディがこれまた素晴らしく、手放しで万人にオススメできる曲。
5.「SAVAGE MESSIAH」
さっきとは打って変わって、非常にヘヴィでダークな楽曲。ただそれだけではなくどこかもの悲しげな雰囲気もある。
6.「DEAD BUY THEIR DEAD」
これまたヘヴィではあるが、途中の哀愁溢れるフレーズもある。曲の雰囲気として、前作までのアルバムっぽさが残っている曲。
7.「WEB OF LIES」
物悲しさとヘヴィネスが共存する楽曲。
8.「THE FIRST DEADLY SIN」
出だしこそヘヴィであるが、その後は非常にブルータスでファストなリフが繰り広げられる。本作の中で一番攻撃的な楽曲。
9.「BEHIND THE SMILE」
これまた非常にヘヴィな楽曲であるし、そして荒涼感に溢れる楽曲。7曲目の雰囲気をより極端にしたような楽曲。
10.「SNOW BOUND」
マイケル・シェンカーを彷彿させる泣きのギターが十二分に堪能できるインスト曲。
11.「SHADOWS AND DUST」
本作オリジナルのラストを飾るにふさわしく、勢いは有りつつ、叙情的で、高揚感もある楽曲。
12.「LAMENT OF A MORTAL SOUL」
日本版のボーナストラック。曲自体は11曲目と同じような雰囲気。
また13曲目に、「SHADOWS AND DUST」のインスト版が収録されている。
アルバム情報
リリース:2002/3/18(日本のみ2001/4/25)
メンバー:
Angela Gossow – Vo.
Michael Amotto – Gt.
Chirstopher Amotto – Gt.
Sharlee D’Angelo – Ba.
Daniel Erlandsson – Dr.
地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム(主にFPS)。
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