SOUTH OF HEAVEN / SLAYER

レビュー

先日最後のライブを終えた帝王・スレイヤーの4枚目のアルバム。

 

本作最大の特徴は前作との対比であろう。前作「Reign in Blood」は非常に早い楽曲が散りばめられ、まさにスピードと攻撃性に重きを置く「スラッシュメタルの聖典」と評される内容であったし、その評価は今なお変わっていない。しかし今作はその方向から180°方向性の違うアルバムと言っても過言ではない。

 

もちろん「SILENT SCREAM」のように、前作を彷彿させるようなテンポの早い曲もあるし、部分部分で聞けばそれなりのスピードでもある。けれども、アルバム全体で見れば一気にテンポを落としている。手持ちのCDのブックレットによれば、この変化によって離れていったファンも少なからずいたという。だが本作によって勝ち得た、おどろおどろしい不気味さはその後のスレイヤーの持ち味となっていき、その後これまた名盤の「SEASONS IN ABYSS」へとつながっていく。彼らのキャリアのなかでターニングポイントとなったアルバムであろう。

 

ちなみに後年バンドメンバーの故ジェフが語ったところによると、最初から前作とは異なる方向性で作成しようとメンバー間で話し合いが行われたとのこと。というのも、メンバーたちも前作のReign in Bloodを超えるアルバムは作れないと分かっていたようだ。そのためあえてテンポを落としたということ。この読みはちゃんと当たったというわけだ。

 

それにしても流石と言わざるを得ないのが、テンポ落とし、暗い雰囲気を強調しながらも、「スレイヤーである」ということ自体はぶれていないということだ(もっとも、それは私が比較的最近のスレイヤーから入った後追い世代だからそう感じているだけかもしれないが)。これは後年、同じように音楽性を変更したメタリカとは大きく異なる点である。これが後に帝王と呼ばれるバンドだからこそ成せた技だろうか。

 

ちなみに、本作にはJudas Priestの「DISSIDENT AGGRESSOR」のカバーが収録されている。「歌うトム」というなかなか珍しいものが聴けるし、1stとはまた違った方向でNWOBHMの影響を伺えるので、一聴の価値あり。

 

おすすめ楽曲

1. South of Heaven
冒頭からどんよりとした空気が溢れており、まさに墓場から死者が蘇ってくるかのうようである。このアルバムが前作までとは違うことを初っ端から突きつけてくる曲。

2. Silent Scream
本作でもっとも早いと思われる曲。本作の中ではこれまでのスレイヤーっぽい曲。

5. Mandatory Suicide
1曲目に負けず劣らずの暗く重い雰囲気の曲。

6. Ghosts of War
2曲目と並ぶ攻撃的な楽曲。自作のSEASONS IN ABYSSに収録されていそうな、攻撃性と暗さを兼ね揃えた曲。

アルバム情報

リリース:1988/7/5

メンバー:
Tom Araya – Vo.Ba.
Kerry King – Gt.
Jeff Hanneman – Gt.
Dave Lombardo – Dr

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