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レビュー
デンマークの産んだ国民的ヒーロー、ディジー・リズ・リジーの4枚目のアルバム。前作「Forward in Reverse」から4年ぶりの新作である。
一応前作発表後、次のアルバムが作成中であることは2017年に言われており、2018年にはリリースされるのでは無いかという話もあったようだが、結局その年にはリリースされたなかった。しかし2019年9月に、「来年の春新作リリース」と正式にアナウンスがあり、11月に本作収録曲「CALIFORNIA RAIN」がYouTubeにて公開される。そして3/20（日本は先行リリースで3/18）に、満を辞して発表された。
一通り本作を聴いてみた感想としては、非常に壮大な雰囲気を持つ実験作であると思う。まず#1「THE RICOCHET」は本作全体のイントロにあたる曲であるが、SF映画かのような、静かながらも幻想的かつ重厚的な雰囲気であり、そこから続く#2「IN THE BLOOD」。非常にヘヴィなドラムと、前面に押し出されたベースサウンドが過去の彼らのどの曲とも似ておらず、早速本作が挑戦的なアルバムであることを窺わせる。ティムのギターは持ち前の独特のセンチメンタルなメロディラインは保持しつつも、やはりどこかヘヴィネスを強調したサウンドとなっている。そしてこれまた間髪入れずに次の#3「BOY DOOM」へと続く。雰囲気としては#2の延長線上といった感じで、ここまで長尺の1曲を聴いている感じである（正直最初ながらで聴いていたら、どこから次の曲に移ったのか全くわからなかった。）。
#4「THE MIDDLE」はクランチのギターのアルペジオとティムの切ないボーカルが主体の曲。しかしバラードと言ったわけではなく、雰囲気は#1で感じた雄大な感じに近く、バックで邪魔にならによう微かに聞こえるシンセサウンドがそれを助長している。#5「CALIFORNIA RAIN」は先述の通り先行公開されていた楽曲。本作の中ではなかなかにハードでロック色の強い曲。
#6以降は「AMELIA」という組曲となっている。まず#6「PART1: NOTHING THEY DO THEY DO FORT YOU」のアルペジオ主体の静かな雰囲気で幕をあけ、次#7「PART2: THE PATH OF LEAST EXISTENCE」は一気にラウドな感じとなる。ただ面白いのは、サウンド自体はかなりハードとなるのに、ティムのボーカルは#6から変化させず継続していることによって、雰囲気自体はガラリとかわりつつも前曲からの続きであることがはっきりとわかるようになっている。そして#8「PART3: LIGHTS OUT」は前作の「Frey」を想起させる曲で、再度幻想的なアルペジオ主体の落ち着いた雰囲気となる。そこから他楽器陣が追加されて盛り上がるも、その前の幻想的な雰囲気は維持している#9「PART4: ALL SAINTS ARE SINNERS」へ自然と移行。一通りの盛り上がりを見せた後で、ラスト#10「PART5: ALTER ECHO」で静かながらも幻想的なアウトロで締めくくられる。
前作はかなりロック色が強かったが、今作はシンセを使った独特な重厚感、没入感を取り入れたり、長尺の組曲を入れたりと、かなり実験的というか、プログレ的な側面を感じさせる作品である。もちろん過去どのアルバムとも比較できるものはなく、休止期間があったとはいえ、もう30年ほどまえに結成されたバンドの新作としては挑戦的であるといえよう。しかし彼ら特有のサウンドは本作でもしっかりと感じられ、決して破天荒なことをしているわけでもないところが絶妙な塩梅である。
旧来のファンはもとより、新規で知ったリスナーにもオススメできる一枚。
（ちなみに全くの余談だが、前作のアルバムジャケットは1stで描かれていた女の子が再度登場していたのに対して、今作は2ndのジャケットを想起させるものになっている。そうなると、彼らの次回作はまたあの女の子がジャケットを飾るのだろうか？）
アルバム情報
リリース：2020/3/20（日本は同年3/18）
メンバー：
Tim Christensen – Gt. Vo.
Martin Nielsen – Ba.
Søren Friis – Dr.
収録曲：
#1 THE RICOCHET
#2 IN THE BLOOD
#3 BOY DOOM
#4 THE MIDDLE
#5 CALIFORNIA RAIN
AMELIA
#6 PART1: NOTHING THEY DO THEY DO FORT YOU
#7 PART2: THE PATH OF LEAST EXISTENCE
#8 PART3: LIGHTS OUT
#9 PART4: ALL SAINTS ARE SINNERS
#10 PART5: ALTER ECHO
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地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム（主にFPS）。
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