METALLICA / METALLICA

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レビュー

メタリカの5枚目のアルバム。通称「ブラックアルバム」。そして彼らのターニングポイントとなったアルバム。

 

本作の特徴は何と言っても「スラッシュメタルから乖離」であろう。この作品前も、「MASTER OF PUPPETS」や「RIDE THE LIGHTNING」など、メタリカはミドルテンポを持ち曲としてきた。ただし「FIGHT FIRE WITH FIRE」や「BLACKENED」など、スラッシュメタルバンドとして十分な攻撃的かつ高速の曲もあり、そのコントラストが彼らの持ち味だった。

 

しかし本作は一転、1曲目「ENTER SANDMAN」からして非常にグルーブを重視した曲であり、アルバム通して聴いてもそのような曲が目立つ。一応「HOILER THAN THOU」「THE STRUGGLE WITHIN」といった疾走感を感じる曲はあるが、それらもスラッシュメタルとは程遠い音楽性である。

 

こういった、これまでのアルバムとは全く異なった作品であるにも関わらず、このアルバムのタイトルは自身のバンド名をつけるあたり、スラッシュメタルとは決別する意気込みだったのだろう。事実、この後のメタリカはさらにヘヴィロック、ガレージ、オルタナティブ・ロックと、そもそもメタルというジャンルから一歩距離を置いた作品を作り続け、1〜4枚目のスタイルの曲をつくるのは2008年の「DEATH MAGNETIC」を待たなくてはならない。

 

また本作がきっかけとなり、メタル業界事態もそれまでのスピードや攻撃性を重視した風潮から、グルーブ、ヘヴィネスに重点を置いていった。そう行った意味では「革命」を落とした作品ではあるが、こうった傾向は旧来のメタルバンドの存続を危機的なものとし、ある意味でメタル界隈を絶滅の危機に追いやった異端児とも言える。

 

こういった背景もあり、手放しで「名盤」とも呼べず、いまだ評価が分かれている作品ではある。

 

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楽曲解説

1.「ENTER SANDMAN」
非常にグルーブ感の強い楽曲。先にも書いたが、1曲目からしてこれまでのアルバムと明確に違うということを聴き手に突きつけている。
メタリカの曲の中では定番曲かつかなり有名な曲だが、歌詞の内容は意外にも童話がモチーフとなっている。

 

2.「SAD BAD TRUE」
本作、というよりこれまで、そして最新作の「HARDWIRED ~」までをみても、屈指のヘヴィさを誇る曲。ただ曲中盤、ギターソロに入る前のフレーズはどことなく前作っぽさを感じる。

 

3.「HOLIER THAN THOU」
本作の中では早い方。とくに全曲が超ヘヴィかつスローな曲であったので、相対的に疾走感を感じる。ただこういった曲であっても、グルーブさを感じるところにメタリカの音楽性の変化が見て取れる。

 

4.「THE UNFORGIVEN」
エレガットの哀愁溢れるアルペジオから始まる曲。この曲も前作までと違い、彼らのこういったバラード調の曲に見られた「後半に盛り上がりを見せる」ということはなく、どこか淡々としている(過去作でいうと「FADE TO BACKが近いだろうか」)。だがそれが逆に悲壮感を助長しており、個人的には前作の「ONE」にも負けない名曲であると思っている。

 

5.「WHEREVER I MAY ROAM」
今度はちょっとオリエンタルなイントロから始まる。前半部分は本作特有のグルーブ感溢れる感じだが、後半音数はそれほどでもないのに加速しているように感じ、メタリカの持つプログレッシブな面がちらっと顔を覗かせている。

 

6.「DON’T TREAD ON ME」
こちらはひたすらヘヴィでることに徹している曲。イントロの盛り上がりは上々。所々の「タメ」がいい感じにフックとなっている。

 

7.「THROUGH THE NEVER」
グルーブ感はありつつも、疾走感のある曲。特にギターソロ部分でさらに1段階上がるが、その後今度は思いっきりテンポを落とし、そして元のスピードに戻る様はやはりメタリカという感じ。
(全くの余談だが、一時空耳で変に流行った)

 

8.「NOTHING ELSE MATTERS」
本作2曲目のバラード曲。4曲目のほうは悲壮感溢れるパワーバラードであったが、こちらはひたすら哀愁ただようなバラードに仕上がっている。ジェームズの歌唱方法の変化したからこそできた曲であろう。そしてメタリカ初(というか唯一?)のラブソングでもある。

 

9.「OF WOLF AND MAN」
ヘヴィではあるのだが、跳ねるようなリズムのおかげで重苦しくなく、聴いていて心地いい。

 

10.「THE GOD THAT FAILED」
リフはこのアルバムらしいグルーブ感の溢れる感じで、かつ非常にヘヴィ。ただギターソロが妙に哀愁かかりつつも、カーク節とも言えるエモーショナル(あえて悪く言えば投げやりな感じのする)なフレーズがハマっている。

 

11.「MY FRIEND OF MISERY」
個人的にジェームズの歌唱力の変化、向上がよくわかる曲であると思う。リフはヘヴィだが、とくにAメロ、Bメロ部分の表現は、もはやこれまでの吐き捨て系のスタイルは微塵も感じない。

 

12.「THE STRUGGLE WITHIN」
本作オリジナルのラストを飾りつつ、最後に疾走系の曲を持ってくる、という点では、珍しくこれまでのアルバムをスタイルを取り入れている。相変わらず、スラッシュメタル感は一切なく、グルーブ感を感じる部分もあるが、それを補って有り余る疾走感を感じる。

 

13.「SO WHAT」 *ボーナストラック
とにかく歌詞が下品。とあるテレビ放送では放送禁止用語がてんこ盛りということで、ほとんど規制音という事態になっていた。曲調としてはパンキッシュで、聴き方によっては1stの頃の彼らを思い出せるかもしれない。

 

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アルバム情報

リリース:1991/8/12

メンバー:
James Hetfield – Vo. Gt.
Kirk Hammett – Gt.
Jason Newsted – Ba.
Lars Ulrich – Dr.

 

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