【レビュー】S&M2/METALLICA

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レビュー

ヘヴィメタル界の王者:METALLICAと、由緒あるオーケストラ団体:サンフランシスコ交響楽団とのコラボレーションしたライブの様子を収録した作品。

「ヘヴィメタル」と「クラシック」、一見すると正反対とも思えるこのジャンルですが、今日では特に珍しく無くなっています。

例えばシンフォニックメタルであればジャンル自体が「シンフォニー」の名を冠しているし、そのシンフォニックメタルの重鎮NIGHTWISHは今年出したアルバム”HUMAN :‖: NATURE “において、完全にオーケストラで演奏されている楽曲を収録されてます。

またそれ以外のジャンル、例えばメロディックデスメタルのARCH ENEMYも”WAR ETERNAL”において生のオーケストラサウンドを取り入れるなど、例をあげればキリがありません。

しかしながら、あくまでそれらは初めからオーケストラありきで制作されたものであって、初めから調和されるように作品が作られています。

それでは、「生粋のヘヴィメタル」と「クラシック」が正面からぶつかったときにどうなるか?
それを提示したのが20年ほど前に公演されたMETALLICAとサンフランシスコ交響楽団との共演、“S&M”です。

“S&M”の詳細は過去記事を読んでいただければと思いますが、初めからクラシック音楽との融合を前提としてないMETALLICAの各楽曲に、クラシック音楽を演奏する交響楽団が参加する様は前述した通りまさに「ぶつかり合い」という言葉がぴったり。

メンバーも雑誌のインタビューで答えてますが、一体どのようになるか、誰もわからない状態から手探りの状態からのスタート。
お互い緊張感を持ったそのステージは大成功であり、メタルとクラシックの親和性の高さを認識する一つの証明となりました。




あれから20年の月日が流れ、今一度METALLICAとサンフランシスコ交響楽団との共演が実現したのが本作、”S&M2″です。



この”20年”という月日は双方にとって大きな変化をもたらしています。

まずMETALLICA側ですが、ベーシストがジェイソン・ニューステッドからロバート・トゥルージロに変わっています。
さらに彼らは”St. Anger”、” DEATH MAGNETIC”、 “HARDWIRED…To SELF-DESTRUCT”と3枚のアルバムをリリースしている。
その3枚のアルバムを経て、METALLICAは”…AND JUSTICE FOR ALL”以前を意識したような音楽性となり、かつて”LOAD”、”RELOAD”とメタルからも後退して「メタリカは死んだ」と言われたような状態から脱却し、「ヘヴィメタルバンドの王者」としての地位を確固たるものにしています。

そしてサンフランシスコ交響楽団側だが、こちらは全体的に年齢が若返っているように思います。20年前はMETALLICAメンバーとほぼ同い年、もしくはそれ以上の年齢のメンバーが大半だっと記憶していますが、今やMETALLICAメンバーの方が明らかに年上です。
この年齢が若くなったということは、すなわちMETALLICAのような音楽を親しんできた人が多くなっているとも言えます。

このように双方に変化があり、そして何より前回一度経験しているという状況は、今回の試みにおいて非常に有益に働いたようです。

前回はそれこそ前例のない手探り状態、そこから生まれる緊張感も相まって、「荘厳な実験」と表現できます。
それでは今回はどうかというと・・・「お祭り騒ぎ」という言葉がぴったりではないかと思います。




とにかく印象的だったのが、会場の非常にリラックスしたムード。
前回と違って今回はスタジアムでの開催ということもあるかもしれませんが、メンバーいずれもいい感じにラフというか、余計な力のかかっていない雰囲気を感しました。

第一幕(DISC1)は前回の”S&M”の延長線上となっており、「METALLICAの楽曲にオーケストラが参加する」といった内容。
おなじみ”The Ecstasy of Gold”から始まり、その後に”The Call of Ktulu”が続く流れは前回と同じである。
しかしそのあとは前回の”S&M”の後にリリースされた”St. Anger”、” DEATH MAGNETIC”、 “HARDWIRED…To SELF-DESTRUCT”からの選曲が多く、単に前回の焼き回しではないということが見て取れます。

そして第二幕からは本作独自の試みが多く取り入れられています。
まずはラーズのスピーチから始まる。
会場に掲げられた各国の旗を読み上げ、会場にきたファンに対する感謝の言葉のあと、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督、マイケル・ティルソン・トーマスの紹介といった流れだが、ここの雰囲気が同窓会というか、「やぁやぁよくきた!」といった具合で、変な堅苦しさのかけらもありません。

そしてこの後も前回無かった展開ですが、メタリカの楽曲ではなくクラシックの楽曲が2曲演奏されます。
その内1曲「スキタイ組曲」はオーケストラだけだが、もう1曲の「鉄工場 作品19」はMETALLICAメンバーも参加し、ここで「クラシックの画曲にMETALLICAが参加」と逆の関係となっています。

その後前半がほぼオーケストラとジェームズのボーカルオンリーとなった”The Unforgiven Ⅲ”、アンプラグドにアレンジされた”All Within My Hands”と、前回とは異なるアプローチでアレンジされた楽曲が続きます。

極め付けは”(Anesthesia) – Pulling Teeth”である。スコット・ピンゲルという奏者がエレキ・チェロを使ってほぼソロで演奏、終盤にラーズのドラムが加わるという流れだが、まさにクラシック音楽を愛していたクリフ・バートンへ敬意を表する演奏である。


ただ単に前回S&Mの20周年記念としてだけでなく、新たな楽曲、新たな試みを行ない、それを変に厳かにせず、ナチュラルにオーケストラと親和させた本公演まさに「お祭り」であると思いました。








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アルバム情報

リリース:2020/8/28

収録曲
◆DISC1

  1. The Ecstasy of Gold
  2. The Call of Ktulu
  3. For Whom the Bell Tolls
  4. The Day That Never Come
  5. The Memory Remains
  6. Confusion
  7. Moth Into Flame
  8. The Outlaw Town
  9. No Leaf Clover
  10. Halo on Fire

◆DISC2

  1. Intro to Scythian Suite(曲紹介「スキタイ組曲」)
  2. Scythian Suite, Opus 20 Ⅱ: The Enemy God And The Dance Of The Dark Spirits
    (スキタイ組曲(アラとロリー)作品20 第2曲:邪教の神、悪の精霊の踊り)
  3. Intro to The Iron Foundry(曲紹介「鉄工場」)
  4. The Iron Foundry, Opus 19(鉄工場 作品19)
  5. The Unforgiven Ⅲ
  6. All Within My Hands
  7. (Anesthesia) – Pulling Teeth
  8. Whenever I May Roam
  9. One
  10. Master of Puppets
  11. Nothing Else Matters
  12. Enter Sandman
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