レビュー
アメリカのメタルコアバンド、トリヴィアムの8枚目のスタジオアルバム。メンバーは前作、前々作から変わらず、プロデューサーも前作と同じであるため、作品の方向性は前作と飛び抜けて変化があるわけではない。ただし、全体的によりタイトで洗練された印象をうける。
もともとトリヴィアムはメタルコア勢の中では派手さはないものの、その分シックでダークな雰囲気だったと思う。個人的に最も「メタルコアらしい」サウンドのバンドとしてはブレット・フォー・マイ・バレンタインがそうだと思うのだが、そこ比較すると一目瞭然だろう。そんな彼らだが前々作から自身の強み、アイデンティーを自覚したのか、その部分をより洗礼させる方向に持っていっているように思い、前作「The Sin and the Sentence」は彼らの一つの到達点に達した作品であった。
本作はその路線はそのままに、様々な音楽ジャンルの要素も内包し、彼らの音楽性をより高めるための実験作としての要素も持ち合わせているように思う。例えば#2「What the Dead Men Say」の冒頭や#4「Amongst the Shadows & the Stones」なんかはデスコアを思わせる。そしてその#2もそうだし、続く#3「Ctastrophist」、#4「Amongst the Shadows & the Stones」などはいくつものリフ、フレーズが洪水のように流れてくる様はプログレ的であるとも言える。とくに#3に関してはそこそこの尺がある曲ということもあり、2、3曲分のフレーズやアイデアは入っているかのように思う。それを蛇足であるかのような部分がなく一つの曲としてまとめているところに、これまでのキャリアの集大成的なものを感じる。しかしそうかと思えば#6「The Degiant」や#10「The Ones We Leave Behind」は彼ららしい陰鬱さはありつつもストレートなメタルコアの印象を強く受ける楽曲であるし、#4はどこか「Shogun」あたりの面影を感じる。
現体制になってから早5年、アルバム3枚と時間が経過し、このようにあれこれ前衛的な取り組みができるようになったのであろう。バンドそのものも20年以上経とうとしている中、成熟しつつもまだ進化の余地を見せることができた、傑作アルバムであると思う。
アルバム情報
リリース:2020/4/24
収録曲:
1. Ⅸ
2. What the Dead Men Say
3. Catastrophist
4. Amongst the Shadows & the Stones
5. Bleed Into Me
6. The Defiant
7. Sickness Unto You
8. Scattering the Ahes
9. Bending the Arc to Fear
10. The Ones We Leave Behind
メンバー:
Matt Heafy – Gt. Vo.
Corey Beaulieu – Gt.
Paolo Gregoletto – Ba.
Alex Bent – Dr.
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地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム(主にFPS)。
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