【レビュー】S&M / METALLICA

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レビュー

ヘヴィメタルとクラシック音楽。この二つのジャンルは相反するものだと、多くの人は思っているだろう。しかしながら、楽曲の展開や使用している音階など、実は共通した要素が数多く見られる。そのためか、メタル界隈ではクラシック音楽にも好感を持っている人間が比較的多い。また本物のオーケストラを取り入れているバンド、楽曲も数多い。そういった中で1999年にリリースされた本作S&Mは、単にオーケストラを取り入れた楽曲というだけでなく、「スラッシュメタルやヘヴィなロックを主とするメタルかの楽曲がクラシックと組んだらどうなるか?」という、実験的かつ野心的な作品である。



もともと「メタリカの楽曲とクラシックとの融合」というアイデアそのものはずっと前からあったらしい。というのも、メタリカの伝説のベーシスト、クリフ・バートンはクラシック音楽を愛聴していた。そのためクリフが関わった楽曲は非常にドラマティックで、それでいてダークで重苦しい雰囲気を携えているわけである。結局クリフ存命時には実現しなかったが、5th「METALLICA」収録曲の「NOTHING ELSE MATTERS」のオーケストラアレンジにてマイケル・ケイメンと一緒に仕事をして知り合ったのをきっかけにして、そこからさらに7年かかってしまったがこの年にようやく実現にこぎつけたというわけである。



収録曲は下記のアルバム情報をご覧いただければと思うが、本作は2nd「RIDE THE LIGHTNING」 から当時の最新アルバム「RELOAD」までの楽曲から満遍なく選曲されている。1st「KILL EM’ ALL」からないのは、流石にこのアルバムは少し純粋なメタルとしての側面が強すぎたのだろう。


この試みの出だしは彼らの恒例「THE ECSTASY OF GOLD」、もともと映画音楽だけあってこれは「まぁいつも通りな始まりだな」とは感じつ、「サンフランシスコ交響楽団の演奏は普段クラシック聞かなくても惹きつけられるなぁ」などとも思いつつ、そこから「THE CALL OF KTULU」。普段ならこんな静かな楽曲からライブが始まることなんてないが、やはり今回は特別版、あくまでもクラシック音楽との融合を試みる催しなのだから、いつもと違って当然なのだ。そこから徐々に盛り上げていったところで、いきなり「MASTER OF PUPPETS」。ここでようやく「ヘヴィメタル」と「クラシック」の真の融合が見られる。この曲はメタリカの楽曲の中でも激しくもかなりドラマティックな展開を有している曲だけあって、本曲のクラシック音楽との融合具合は正直他の楽曲と一線を画しているように思う。その後も「リロード」までの楽曲の名から選ばれた楽曲が並ぶが、前半までだと上記「MASTER OF PUPPETS」以外だと「THE THING THAT SHOULD NOT BE」「THE MEMORY REMAINS」「HERO OF THE DAY」あたりが特にクラシック音楽と上手に調和しているように感じる。



後半は「NOTHING ELSE MATTERS」にてこれまた静かに始まり、その後「UNTIL IT SLEEPS」、「FOR WHOM THE BELL TOLLS」などが続く。そしてラストは「ONE」「ENTER SANDMAN」「BATTERY」と彼らのキラーチューンを持ってこのライブは締めくくられている。しかし、不思議なことにラスト2曲はどちらも彼らの代表曲として必ずライブで披露される人気曲であるが、今回の試みでむしろ目立ったのはそういった楽曲ではなく、後半の楽曲から選ぶとするなら「FOR WHOM THE BELL TOLLS」とか「WHENEVER I MAY ROAM」などといった、確かに人気ではあるけれども通常オープニングやラストで演奏されるようなものとは違う楽曲の方がよりクラシック音楽との親和性という点では成功しているように思う。



またこの試みのために「NO LEAF CLOVER」「HUMAN」という2曲が新たに書かれている。どちらも「オーケストラありき」といった内容であり、これまでのメタリカとはちょっと違ったテイストの楽曲となっているので、是非とも一度聞いていただきたい。



この企画は見事成功を収め、2019年に20周年企画として「S&M2」として全国の映画館で同時上映されたのは記録に新しい。こちらもこのオリジナルに負けず劣らずであったので、是非とも早くBDなりCDなりでリリースして欲しい。

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アルバム情報

リリース:1999/11/23


収録曲:
DISC1
1. THE ECSTASY OF GOLD
2. THE CALL OF KTULU
3. MASTER OF PUPPETS
4. OF WOLF AND MAN
5. THE THING THAT SHOULD NOT BE
6. FUEL
7. THE MEMORY REMAINS
8. NO LEAF CLOVER
9. HERO OF THE DAY
10. DEVIL’S DANCE
11. BLEEDING ME

DISC2
1. NOTHING ELSE MATTERS
2. UNTIL IT SLEEPS
3. FOR WHOM THE BELL TOLLS
4. -HUMAN
5. WHENEVER I MAY ROAM
6. THE OUTLAW TORN
7. SAD BUT TRUE
8. ONE
9. ENTER SANDMAN
10. BATTERY


メンバー:
James Hetfield – Vo. Gt.
Kirk hammett – Gt.
Jason Newsted – Ba.
Lars Ulrich – Dr.

San Francisco Symphony
(詳細メンバーは割愛)


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