レビュー
リヴァプールの残虐王、CARCASSの6枚目のスタジオアルバム。
CARCASSは最初期のメロディックデスメタルバンドとして名を馳せていましたが、1996年に「SWANSONG」というアルバムをリリース後に一度解散します。
しかし2007年に電撃的な復活を遂げ、様々なフェスやライブに参加して活動を再開していました。
しばらくはライブ活動を中心としていましたが、2012年に新曲のレコーディングに入ります。
その少し前にメンバーのマイケル・アモット、ダニエル・アーランドソンがご存知ARCH ENEMYの活動に集中するために脱退していますが、新たにHEAVEN SHALL BURNで活動していたダニエル・ウィリングが加入し、新作のレコーディングが開始されます。
そうしてできた作品が17年ぶりに発表された本作です。
アルバム全体の感想としては、さすが「残虐王」と表されたバンド。
全体的に非常に勢いがあります。
変にバラード曲や極端にヘヴィな楽曲がなく、ひたすらテンポよく、常にパワフルに突き進んでいきますので、聴いていて非常に爽快感がありますね。
ただそこは彼ら、お得意のドロっとした雰囲気も自然と配合し、どこか不気味ながらも一気に聴けてしまうアルバムです。
まずは1曲目”1985″。
復活を呈しているような、静かながらも高揚感溢れるイントロ楽曲。
そこから続く2曲目”THRASHER’S ABATTOIR”は冒頭から一気にトップギア突き抜ける疾走系ナンバーです。
3曲目”CADAVER POUCH CONVEYOR SYSTEM”も同じく疾走系の楽曲ですが、要所要所でNWOBHMのようなツインギターのハーモニーをフィーチャーしています。そうかと思えばソロ前で一気にテンポを落としていたりとかなり変化に富んだ楽曲です。
4曲目”A CONGEALED COLT OF BLOOD”はややグルーヴィで、CARACASSらしいドロドロとした雰囲気の楽曲です。ただギターソロは透明感あふれるような感じで、逆に楽曲の不気味さが際立っています。
5曲目”THE MASTER BUTCHER’S APRON“は冒頭で再びブラストビート全開で突っ切ており、そのまま疾走系の楽曲なのかと思えば4曲目並にテンポを落とし、ヘビィさを強調したかと思えば、さらに再加速。目まぐるしく緩急の変わるスリリングな楽曲です。ギターのハモリ具合がこれまた不気味さを演出しています。
6曲目”NONCOMPLIANCE TO ASTM F899- 12 STANDARD”。出だしやや東洋風のユニゾンから入った後は名曲”HEARTWORK”を彷彿される軽快なリフが続きます。
ただこれまた途中でギターソロ前にブレイクダウンが入ります。
そこから奏でられるギターソロは面妖な感じがしますね。
7曲目”THE GRANULATING DARK SATANIC NILLS“。
本人はいないのに、どこかアモット節を感じるフレーズがあります。
曲の途中”Six, Zero…”と続くフレーズはライブでの掛け合いが楽しそうです。
全体的にライブ映えしそうなノリのいい楽曲。
8曲目”UNFIT FOR HUMAN CONSUMPTION“は個人的に非常に本アルバムの中でオススメの楽曲です。
軽快なリフの合間に盛り込まれるスリリングなユニゾン。
ハイテンポでないにしろ、高揚感を感じるリフ。
曲の中盤からのドラマティックな展開と、非常にかっこいい楽曲です。
その後の9曲目”316L GRADE SURGICAL STEEL“も同様に気に入っている楽曲です。
こちらは割とストレートにゴリゴリとリフを刻んでいく様子が印象的で、先ほど8曲目とは干渉しない別のスタイルのカッコよさがあります。
ただギターソロはちょっとジャジーな雰囲気がありますね。
それもまた過激な楽曲とのミスマッチ具合が逆にCARCASSらしいです。
10曲目”CAPTIVE BOLT PISTOL“もこれまた比較的ストレートな楽曲ですが、そこにさりげなく含まれる少々ジャジーなフレーズがアクセントとなっています。
途中の超高速ユニゾン含め、体感的なスピードは非常に早いです。
本作のラストを飾る”MOUNT OF EXECUTION“はやや切なさを感じるコード進行。そこにザクザクとしたリフを乗せて行っています。
これまたソロのあたりにはいないはずのアモット兄さんを彷彿とさせるフレーズが。
目まぐるしく変わるスリリングな楽曲です。
久しぶりに作成されたとはとても思えない、非常に完成度の高いアルバム。
メロディックデスメタルとしての叙情的なフレーズはありつつも、かなりストレートなリフを主体とし、尚且つ豊かな展開をも併せ持つ楽曲の宝庫と言える1枚です。
アルバム情報
リリース:2013/ 9/ 13
レーベル:Nuclear Blast
収録曲:
1. 1985
2. THRASHER’S ABATTOIR
3. CADAVER POUCH CONVEYOR SYSTEM
4. A CONGEALED COLT OF BLOOD
5. THE MASTER BUTCHER’S APRON
6. NONCOMPLIANCE TO ASTM F899- 12 STANDARD
7. THE GRANULATING DARK SATANIC NILLS
8. UNFIT FOR HUMAN CONSUMPTION
9. 316L GRADE SURGICAL STEEL
10. CAPTIVE BOLT PISTOL
11. MOUNT OF EXECUTION
*以下、日本盤ボーナストラック
12. A WRAITH IN THE APPARATUS
13. INTENSIVE BATTERY BROODING
*以下、コンプリートボックス収録曲
14. ZOCHROT
15. LIVESTOCK MARKETPLACE
16. 1985 (REPRISE)
メンバー:
Jeffrey walker – Vo. Ba.
Bill Steer -Gt.
Daniel Wilding – Dr.
地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム(主にFPS)。
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