レビュー
アメリカの(見た目も含めて)モンスターバンド、SLIPLNOTの5枚目のスタジオアルバムです。
本作に当たって言及しなければならいことは、二人のメンバーの離脱でしょう。
前作”ALL HOPE IS GONE” をリリースした2年後の2010年、バンドの創設メンバーかつ中核となっていたベースのPaul Grayがホテルの部屋で亡くなりました。
またさらにその3年後の2013年に、今度はドラムのJoey Jordisonがバンドを”離脱”します。
Joey曰く、あくまで”離脱”であって”脱退”ではないとのことですが、2020年時点でも戻っていないので実質”脱退”と見ていいと思います。
最初期からのメンバーが二人もかけてしまった状態ではありますが、バンドは活動継続を選択します。
そういった状況を経てリリースされたのが本作です。
プロデューサーも前作から変わり、この時点でSYSTEM OF A DOWNやMARILYN MANSONを担当し、後にMETALLICAやBLACK SABBATHなどの超大物とも仕事することになるGreg Fidelmanが担当しました。
本作の全体の感想としては、ひたすら過激というよりかは割と静かで、というか落ち着いていると感じる部分が多いように思います。
もちろん冒頭の3曲は非常にアグレッシブですし、ライブ映えしそうな楽曲も6曲目や11曲目のようにいくつかあります。
ただそれよりも要所要所ではいる”静か”で”不穏”で、そして”不気味”な雰囲気の方が強く印象に残りました。
あんまりそういったパートは多く無いのですが、それだけ私にとっては強烈だったということです。
(後述する隠しトラック?も影響しているのでしょうが、それを抜きにしても、でです)
1曲目”ⅩⅠⅩ“はちょっとケルティックな感じがする静かなBGMにてコリィの歌声が響きわたる少し不気味な雰囲気。
2曲目”SARCASTROPHE“にて一気にSLIPKNOT節が炸裂。
ヘヴィでグルーヴィな楽曲ですが、進行していくにつれて様々な展開を見せていきます。
3曲目”AOV”はさらに勢い、重さ共に増していきます。
しかしサビの展開はボーカルがクリーンであることと、バックの透き通るような感じからメタルコアっぽい印象があります。
終盤は静かにどことなくセンチメンタルな感じで終わるのかと思ったらもう一回盛り上がっていく様も◎。
4曲目”THE DEVIL IN I”。ゆったりとしたテンポにて、静かにボーカルが響きわたるパートと、ザ・ニューメタルといったヘヴィネスに重きを置いたパートがメリハリありつつも共存している楽曲。
ヘヴィなんだけど少し哀愁を感じます。
5曲目”KILLPOP“も曲調は「静か」と形容できるんでしょうが、要所要所でバッキングが迫ってくるような迫力があり、しかも後半に行くにつれててその勢いがどんどんと増していきます。
6曲目”SKEPTIC“は先ほどの5曲目に比べるとリズム、メロディ共に結構キャッチーな感じがします。
ライブ映えしそうな感じですね。
それでもしっかりと彼らなりのテイストはしっかりと維持しているんで、合わさることで少しばかり狂気的ですらありますね。
7曲目”LEACH“。6曲目に引き続きアグレッシブな楽曲です。
アメリカのバンドらしい、ヘヴィでグルーヴィな雰囲気を前面に出しています。
ノリはスラッシュメタルらしいところもありますね。
8曲目”GOODBYE“。タイトル通りの少し哀愁漂う静かな楽曲です。
ただ”静か”なんですけど、それで少し”不気味さ”を感じるのがやはり彼らですね。
ちなみにこの曲だけボーカルのコリィがベースを弾いているようです。
9曲目”NOMADIC“。リフはニューメタル色が強いです。
サビのクリーンパートも爽やかではあるんですが、他のパートの雰囲気を吹っ切れるほどではないです。
また珍しく、少し狂気じみた、流暢なギターソロも入っております。
ヘヴィですが、割と聴きやすいかも。
10曲目”THE ONE THAT KILLS THE LEAST“。
メインはコリィのクリーンパートなんで、これまた割と聴きやすい感じですが、こちらはしっかりとバックに重低音が流れております。
11曲目”CUSTER“。こちらもライブで掛け合いがあれば楽しそうですが、6曲目と比べたらキャッチーさは無いですね。
むしろ力強さの方が真っ先に感じられます。
そこに彼ららしいうねるようなリフが絡んでいるような感じ。
12曲目”BE PREPARED FOR HELL“からの13曲目”THE NEGATIVE ONE”。12曲目にて不気味な語りで盛り上げた後、いつものスリップノット節の炸裂する13曲目へと続きます。
13曲目は一部のリフをよくよく聞くと割と複雑なことやっとりますね。
パッと聞いた感じはそこまでわかりませんが。
その他の部分はいつものうねりのあるリフが主軸ですね。
14曲目”IF RAIN IS WHAT YOU WANT“。
最後に加速して盛り上がる曲でも来るのかな?と思ったら、終始彼らお得意の静かながら不穏な雰囲気が続いていきます。
ヘヴィなバッキングも聞こえてはいますが、あくまで”不気味さ”が前提に来ています。
そんな不穏な雰囲気が淡々と、というには要所要所で盛り上がりを見せながら本作は終了していきます・・・が。
15曲目(というか15トラック)以降、しばらく電波が入っていないようなラジオみたいな状態が続いた後、これもどこかしらのラジオを拾ってきたような音声が不気味に流れます。
しかも所々電波が悪くなるようなエフェクト付きで・・・
私はあまり英語のリスニング得意で無いので何いっているのかよくわかりませんが、談笑って感じでしょうか?
それが終わったと思ったらハーモニカとアカペラ、そしてコリィの歌声が突如聞こえてきて終了します。
まさに”猟奇的”と言いますか、わかりやすく暴力的というわけでなく、静かながらに不穏な雰囲気をうまく演出しています。
この傾向は次作”WE ARE NOT YOUR KIND”でも取り入れられています。
アルバム情報
リリース:2014/ 10/ 21
レーベル:ROADRUNNER
メンバー:
Corey Taylor – Vo. Ba.(8曲目のみ)
Mick Thomson – Gt. Ba.
Shawn “Clown” Crahan – Percussion, Backing Vocal, Drum, など
Craig “133” Jones – Sampling, Keyboards
Jim Root – Gt. Ba.
Chris Fehn – Percussion, Backing Vocal
Sid Wilson – Turntables
Alessandro Venturella – Ba.(ただし全曲では無い模様)
Jay Weinberg – Dr.
地方会社員アラサーメタラー。仕事で溜まった鬱憤をメタルに費やしております。
給料は大体メタルの音源かライブ遠征費用に消えるので、なかなか貯金ができないことが目下の悩み。
その他の趣味はバイクとゲーム(主にFPS)。
コメント